目指すはファッションの “マスカスタマイゼーション” Yuima Nakazato『中里 唯馬』-最終話- / 5W1HF

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連載企画「5W1HF

既存の常識に囚われず、独自の視点と感性で常に新しいものを作り続け、世界で活躍するクリエイターの深部に迫るこの企画。

第3回目となる今回は、現在31歳でYuima Nakazato(ユイマ・ナカザト)のデザイナーである中里唯馬氏。

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第2話はこちら

 

Yuima Nakazato / 中里 唯馬
彫刻家の父と彫金家の母の間に生まれ、幼いころから現代アートや様々な表現に囲まれて育つ。独学で服作りを開始し、ベルギーアントワープ王立芸術アカデミーファッション科入学。卒業コレクションがヨーロッパで数々の賞を受賞。2016年パリ・オートクチュール組合より招待デザイナーに選ばれパリでコレクションを発表。テクノロジーとクラフトマンシップを組み合わせた新しいものづくりを提案する。http://www.yuimanakazato.com/

 
 

テクノロジーだけでは味気ない。相反する2つの物の融合で新たな側面を

 

初めてのクチュールコレクションでは、前年に訪れたアイスランドの地から着想を得ました。
 
そこは人工物の一切ない、岩や氷といった自然のものだけで成り立つ世界で、地球とは思えない、まるで別の惑星にいるような感覚に陥るほど幻想的な風景が広がっていました。
 
氷、空、海、オーロラなど自然現象の中の色の変化をコレクションに落とし込み、制作の段階では3Dプリンタやカッティングプロッタといった最新テクノロジーを取り入れました。
 
また、日本独自のクラフトマンシップを海外へ発信していきたい、そんな想いから、日本の伝統技術や工芸品もコレクションに組み込みたいと考え、実際に職人さんの元へ足を運び、話を伺いました。
 
テクノロジーと伝統技術、機械と手作業、過去と未来。相反する2つものの融合で、新たな側面を生み出すことができると考えました。
 
実際に、漆を用いたり、江戸切子の繊細なカッティングを加えたブレスレットを製作しました。「ホログラム」と呼んでいるフィルム素材を使った有機体を連ねていくことで服へと形成しているのですが、これも全て手作業で仕上げます。
 

“進化”を見せた今季のオートクチュールコレクション

 

2回目となった今回のクチュールコレクションでは、2つの大きな進化があります。

1つは、前回に続き、パーツを連ねて服ができているのですが、今回は自由に後から組み替えることができ、さらにパーツの種類も無限に拡張していけるようになりました。

これにより、どんな体型の人でも合わせることができたり、自由にどんな素材でも組み合わせることができるようになりました。 
 
また、継続して使用しているホログラムフィルムは、マイクロカットし、髪の毛の5分の1の細さの糸とおり合わせてオーガンザをつくることに成功しました。これにより、驚くほど軽くてしなやかに進化をとげることができました。
 
この“進化”は、継続して同じ素材や発想と向き合い続けているからこそ見出せる物です。今後も、継続して着実に進化している姿を見せていきたいと考えています。
 
ただ、進んでいるのは道なき道。地図にのっていない道を歩む冒険家のような精神です(笑)。
 
それだけに荊の道ですし、行ってみたけれど行き止まりで引き返す、なんてことの繰り返し。
 
それでもチームのみんなと気持ちを共有し、時に勇気づけ合いながら高みを目指していきたいですね。

                                                                                             

明確に見える目的地と未来のヴィジョン

 

パリコレでのショー開催は、思い描くヴィジョンや“進化”する過程を世界に向けて発表する場として、これからも継続していきたいと考えています。
 
それと平行して一般の方にも、進歩したテクノロジーや開発したシステムがどのような影響を人類にもたらすことができるのかを伝えていくことが今後の大きな目標。
 
そのために、ユニット式(パーツを連ねて形成できる仕組み)を用いた商品を、実際に一般の方が購入できるアイテムやシステムを構築できるよう、進めています。
 
一人ひとりの体に合った、一点物の服を全ての人に。
 
道標はなくとも、目的地は明確です。これからも“進化”する姿を見守って頂き、手に取れる商品を楽しみにしていてください。
 
 

筆者にとって中里氏への取材は今回で2回目。前回は、初めてパリでオートクチュールのショーを終えた翌日で、安堵の表情が印象的だった。対し今回は、ショーを終えたという事実はそっちのけで、意欲的に次のステージを見据えているような目をしていた。常に私たちの想像を遥かに超え、先へ先へと進む中里氏の背中が見えなくなるほど進んでしまうのではないかと思うほどだ。

Ready To Wearがますますリアルに近づき、実用性や機能性を求められているのに相反して、オートクチュールはいつの時代も変わらず私たちに夢を見せてくれる存在。困難な時代だからこそ、憧れや空想が与えてくれる感動は大きく、ファッションはより深い意味を持つ。また半年後、Yuima Nakazatoのオートクチュールで空想に耽る瞬間が待ち遠しい。

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